バイク屋の仕事~販売~

バイク屋の仕事
 私はバイク業界歴12年、バイク屋店長歴5年、

 一度の転職を経験し計2つの会社で勤務していました。

 それらの経験を元に,バイク屋の仕事をひとつづつ解説します。

 今回はその中で多くのバイク屋の大きな収入源である「販売」にフォーカスを当ててみます。

 今現在、バイク屋で働いている方、これからバイク屋で働いてみたいと考えている方の

 振り返りや参考になれば幸いです。

新車販売

 ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキ・その他外車等の車両の販売を行います。

 昨今の新車のラインナップはバイク全盛期に比べ非常に少なくなっているものの、

 50CCから1000CCクラスまで見ればその数は膨大です。

 細かな諸元までは記憶していなくても、大まかな特徴、装備、

 似た系統のライバル車種くらいは常に頭に入れておく必要があります。

 購入を検討されているお客様からは当然様々な質問があります。

 その際、プロフェッショナルとして理路整然とお答え出来るかどうかで

 お客様からの信頼や成約率は大きく変わるでしょう。

 また、中古車に比べて一台販売した際の利益は少なく、

 購入時のオプションの販売は必須となります。

 加えて正規ディーラーには年間通して一定数メーカーから車両をする必要がある為、

 毎月コンスタントに販売しなければならず、

 売れなければどんどん在庫が増え続ける様な枷にもなり得ます。

 ただ、中古車と違い仕入れたままの状態ですぐ販売出来る上に、

 納車整備は時間もかからない為、車両にかける時間は少なくすむ事は大きなメリットです。

 また、最新の装備やテクノロジーが満載で、それらに触れ合うだけでも楽しいです。

中古車販売

 各メーカーの中古車両の販売です。

 こちらは新車と違い、現ラインナップにない廃盤車両の販売が可能で、

 多くの層のお客様に対して対応可能です。

 利益に関して、上手に安く仕入れ、予算を出来るだけかけず仕上げ、

 高い金額で販売出来れば大きな利益となります。

 ただ、状態の悪い車両を仕入れてしまうと、

 整備に想定以上の高額な費用が発生しほとんど利益が出ないなんて事もあります。

 さらに、年式の古い車両となると部品が既に手に入らず、整備すら出来ない事もありえます。

 しっかりとした目利き、多くのバイクの知識、部品の有無に対するアンテナ等、

 長い経験を積み重ねて初めて成り立つ領域です。

 しかし、新車の様な最新装備に彩られたハイテクマシンにない、

 古き良き造形美やシステム、デザインには強烈な魅力があるでしょう。

 2サイクル車やキャブレター車等覚える分野は膨大ですが、その分見返りは大きいと思います。

用品販売

 ヘルメットやグローブ、ロックやアラーム等のセキュリティ関係、

 ジャケット等多岐にわたります。

 ただ、用品店ではない限りヘルメット数点、グローブ数点、

 ロック数点くらいの在庫でしょうか。車両販売に比べると、多くの知識は不要に思います。

 ただ、ヘルメットはどの形のものが良いか、どんな違いや良し悪しがあるかや、

 有名メーカーの主力製品くらいは説明出来なくてはなりません。

 また、セキュリティはどんな物が有効か、

 コストパフォーマンスや利便性の観点からおすすめ出来るかどうかも重要です。

 バイク屋はバイクだけ売れば良いわけではありませんからね。

 そういった細やかなサポートも信用を勝ち取る貴重な機会なのです。

部品販売(カスタム)

 マフラー、ステップ、ドライブレコーダー、レバー、ミラー等、こちらも多岐にわたります。

 基本的に販売+取り付けになる事が多いため、カスタム車両を好まないディーラーには

 あまり関係がなかったりしますが、こういった要望が多いのは事実。

 各有名メーカーの主力製品くらいは知っておいた方が無難です。

 一部のショップを除いて、日常業務の中では割合はかなり少ない部分ではあります。

まとめ

新車販売


・メリット

 仕入れたままの状態ですぐに販売出来る上、大きな整備は不要の為楽で時間がかからない。

 特別な広告を打たずとも、新車ブランドだけで多くのお客様が購入してくれる。

 販売後の故障が少なく、クレーム対応に追われる事が少ない傾向にある。

 最新の装備やテクノロジーの数々に、バイクの進化をしみじみ感じる事が出来る。


・デメリット

 一台販売あたりの利益が少なく、オプション販売等も平行して行う必要がある。

 ディーラーは毎年一定数メーカーから仕入れる必要がり、

 売れなければ在庫がどんどん増えていき店舗内敷地や運転資金が圧迫される。

 近年のコロナ情勢で生産がほとんで出来ておらず、
 
 成約車両の確保が非常に困難。その分のお客様対応が大変。

中古販売


・メリット

 仕入れ次第で一台販売あたりの利益が大きい。

 旧車を含めれば数多の車種を提供出来る為、広い層のお客様に販売が可能。

 また、中古車はやはり一点ものの為、

 珍しい車両であれば日本全国のお客様を対象に優位に販売可能。

 古き良き名車が多く、携わる事で多くの経験や知識が手に入る。

 新車と違い、決まった数仕入れなければならない制約は無い為、

 必要な時に必要な数だけ仕入れられる。


・デメリット

 仕入れてからの整備や洗い磨き等、納車までの手間が非常にかかってしまう。

 新車特有のブランドが無い為、

 一台一台しっかりと広告を打ち集客しなければ長期在庫となってしまう。

 膨大な知識と経験が必要になる。

 粗悪な車両を仕入れてしまうと整備に高額な金額が発生し利益が消し飛ぶ恐れがある。

 年式が古いと部品が手に入らず、

 整備やその後の修理・メンテンナンスが出来なくなる恐れがある。

 車両納車後の不具合の可能性はやはり新車より高く、クレーム対応の数は格段に上がる。
用品販売


・メリット

 車両販売とセットで販売出来る為、ほとんど営業する必要が無く販売しやすい。

 車両購入のお客様意外でも用品を求められる方は一定数いるので、

 多くのお客様に対応が可能となる。

 少額ながらも利益は利益なので、やはりありがたい。

 お客様に良い提案が出来れば、

 用品販売の中で多くの信頼を勝ち取る事が出来る。


・デメリット

 車両販売程の利益は出ない。

 店内に在庫する必要がある為、敷地を圧迫しやすい。
部品販売(カスタム)


・メリット

 カスタムには一定の需要があり、

 それらのお客様のニーズに答える事が出来れば常連客を増やす事が出来る。

 加工が必要な部品(配線加工や切削加工等)は利益が大きい。

 お客様によっては車両販売時にセットで提案出来る為、営業しやすい。


・デメリット

 特にディーラーだが、そもそもカスタムを好まない店舗が多く、

 お客様のニーズに答えられずかえって評判を落としてしまう。

 純正部品に比べて耐久力が低い傾向があり、故障等のクレーム対応が増える。

 やはり大きく利益が出る事はない為、手間暇だけがかかる事がある。

販売のコツ

商品の販売の基本かもしれませんが、バイク業界歴12年の私が常に気をつけている販売時のコツを書いていきます。

もちろんそれらより優れているテクニックは多々あるでしょうし、私が絶対に正しいわけではないので参考までに。
1.提案よりも先にヒアリング

 既に購入車種を決めてご来店される方はただ手続きするだけですが、

 多くのお客様はそうではありません。

 そもそもどんな車種があって、いくらお金がかかるのか、

 どんな違いがあるのか等スタッフに相談込みでご来店されます。

 特に初めてバイクを購入される方には「ヒアリング」が最も重要になります。

 「主たる目的は?」

 「予算はいくらか?」

 「使う頻度、1日乗る距離は?」

 「運転する道は平坦か坂道が多いか?」

 「デザインや色等見た目の好みは?」

 「どんな性能が好ましいか?速さなのか、燃費なのか、

 収納力なのか、耐久力なのか、装備の充実か?」

 最低でも上記の全ては聞き取るべきでしょう。

 その中で、範囲内の車種を選別し提案をするとスムーズな商談になる事が多いです。

 もちろん、その提案を押し付けるのではなく、

 「こういった選択肢もあるという」スタンスで

 お客様と一緒に悩み、一緒に答えを模索する事が重要です。
2.メリットだけでなく「デメリット」も伝える

 お客様の多くに店員に対して「不信感」を抱いておられる方は少なくないように思います。

 当然、プロである店員に知識や経験で勝つ事は難しく、

 「言いくるめられる」

 「騙される」

 という先入観に囚われる事は容易に想像出来ます。。

 商談の中で、いかに信用を勝ち取るかで成約率は大きく変わります。

 それはしっかりデメリットも伝える事です。

 もちろん商品を単にけなせばいいわけではありません。

 例えばAのバイクは燃費や耐久力は申し分ないが、車体重量が重かったとして、

 「このバイクは重いんですよ~。」と伝えると悪印象しか残りません。

 言い方を変えて

 「このバイクは他車種よりも○○kg重くなりますが、それは〇〇といった装備を

 装着している為で、そのおかげで燃費や耐久力は他車種よりも〇〇%優れています。」

 という言い回しにするとデメリットではある部分がデメリットに聞こえにくくなります。

 その上、メリットばかり言うスタッフよりもちゃんと悪い部分も言ってくれるスタッフに昇格し

 お客様からの信用を得る事が出来ます。

 もちろんこれだけで100%信用されるわけではありません。

 少しづつ「信用ポイント」を積み重ね、100%に達した時お客様は
3.お客様が悩んでいる時はあえて一旦帰らせる

 ここは一番賛否が分かれると思います。

 が、私の今までの経験上、買うか買わないかの最終段階において、

 ラッシュをかけて売り切るよりも、

 あえて一旦持ち帰らせて再検討してもらった時の方が成約率が高いように思います。

 商談の最後で一旦帰らせる選択は確かに怖いです。

 「もしかしたらもうご来店されないかもしれない」

 「他店で購入されるかもしれない」

 「考えた結果、バイクは購入すべきでないと購入自体諦められるかもしれない」

 実際不安になります。

 ただ、思い切って考える時間を与えるようにした方が良いと私は思います。

 まず、最終局面で買った方が良いですよ!と畳み掛けた際、

 多くの人は最後の判断を躊躇します。

 そこで一旦持ち帰らせてと「お客様」から言われた場合、

 「あのスタッフは売る事ばかり考えている。」

 「必死すぎて信用ならない。」

 と「悪印象だけ」が残ります。

 また、結果バイク購入を断念する方はその時成約に至ったとしても

 後日キャンセルの連絡がくるだけで、無駄な後処理だけが残る事もあるでしょう。

 であれば、一旦帰ってもらって

 「明日になってもこのバイクが欲しい気持が変わらないのなら購入をお願い致します。」

 といった方が、お客様からの印象はずっと良くなります。

 こういったケースでは他店との比較をされている方が多いので、

 最後の印象が勝敗を分かつ事が意外にも多いのです。

 先述した通り、このやり方が絶対正しいとは言わないので

 方法の一つとして参考にして頂ければと思います。

最後に

 他にもちょっとしたテクニックは多々ありますが、重要度が高いものを書いてみました。

 結局、どんなに良い商品でも、担当者が「嫌い」ならだれもその人からは物を買いません。

 逆に担当者が「好き」であれば、多少のマイナスポイントがあったとしても

 買ってくれるでしょう。

 それだけお客様への対応は重要です。

 「時間をかけず早く売りたい。」

 「利益率が高いこの車両を売りたい。」

 「なかなか売れないこの車両を売ってしまいたい。」

 商談時、色々思う事は当然あるでしょうが、

 結局は

 「お客様の利益の為に真摯に対応する」

 これしかないと断言します。

 自分本位の人は好かれません。

 お客様にとって、バイクの全てを任せられる「好き」な人になれるよう心がけましょう。

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